872、「宿無し弘文―スティーブ・ジョブスの禅僧」を読む |
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2022年 11月 02日
9月に発行されたばかりの「宿無し弘文―スティーブ・ジョブスの禅僧」をたいへん面白く読んだ。
著者は元出版社に編集者として勤務していた柳田由紀子さん。アップル社を創設したSteve Jobsに禅を通して影響を与えたとして有名になった乙川(知野)弘文の禅僧としての生涯を、彼とかかわりのあった肉親を含めて30名以上の知人、友人を6年かけて日本、アメリカ、ヨーロッパなどを一人一人訪ねインタビューをして、弘文の禅僧としての行状、実像をあぶり出そうとした迫真のドキュメントである。
従ってこの本は、乙川弘文の評伝であるとともに弘文に関わっていたジョブスのそれともなっている。しかもこのドキュメンタリーは最後の章、エビローグになるまで、著者自身の考えは示さず、ひたすらインタビューをした人々の直の声を伝えることで、弘文の実像を浮かび上がらせようとする手法をとっているのが際立って特徴的である。 弘文は、禅宗の高僧達に見られるような世俗を離れた「聖人」ではなく、「泥池の蓮」のように、アメリカや西欧の人々の生活の中にとけ込んで、その汚濁に自らもさらして、その中で禅の普及と悩める人々の救済をめざした「人間臭い」僧であった。曹洞宗を広めようとしたのではなく、仏教、禅を伝えようとしたので、本部からの支部認可などおかまいなく、布教を続けた。だからこそ、海外で多くの人々に影響を与えることができたし、ジョブスの心も掴んだと言えよう。 弘文の講話は、たどたどしい英語で、とぎれとぎれに、言葉を一つ一つ見つけて話を展開していくという説法で、しかも自分自身の言葉で詩を紡ぐように語ったと多くの人が述懐している。表情や姿も“のほん”としていて、あくまで優しく相手を包み込むようであったとも。また弘文は永平寺入山の前の京大大学院の時代に西洋哲学を深く学び、全地球的な宗教観を身につけていて、他の派遣禅僧と違って西洋哲学と比較しながら禅を語ることができたのも海外での布教に役立ったようだ。インタビューの知人たちの伝えるいくつかの彼の言葉が印象的だ。 ー 書道、茶道、華道、作庭、料理の盛りつけなどから身につけた弘文の「間の美意識」、ジョブスはそれをアップルの製品に投影した ―「人を助けるには?」「笑わせてあげることだよ」 ―「みんなは禅は瞑想だと思っている、でもそうじゃない、禅とは掃き清めることだ」 ー「正しい姿勢が大事、姿勢は自らを映す鏡だよ」 ー「円を描くように呼吸する」「私たちは世界の中のほんの、実にほんの一部の空気しか呼吸していない」 ー「アメリカやヨーロッパの禅は時間をかけてそこの人々に合わせて創り上げなければならない、拙速ではだめだよ」 ー「禅堂はまるい方がよい.ヒエラルキーができなくて」 ー「むずかしくしない、まずはエンジョイ禅だよ」 ー「小さな自分を忘れた瞬間、全世界が現れるのです」 さらに般若心経に関しては ― 空とは:「「空」とは深遠な感覚です.とてもとても深い海やとてもとても静かな湖を思い描いてください」 ー 縁起とは:「葉が落ちる時、かすかな音が響きます。それは多分、枝が作り出す音、それとも茎の声、落葉の響きは、雪のひとひらを呼び起こします。その声は.降りしきる雲の中に乗り移るかもしれないし、あるいは春の雨に宿るかもしれません」横山大観の「生生流転」の絵を観ているようだ。 などなど、これがゼングリッシュと揶揄された英語で詩文のように、しかも訥々と紡ぎだされる弘文の説教、、ジョブスならずとも引き込まれそうだ。 もちろん「石部銀吉」ならぬ弘文は、何度かの結婚や家庭生活での破綻、かなりの酒飲みでもあった。それをとらえて「破戒僧」として快く思わない宗教人も居たが、それを気にせず自分らしさを貫き、まるで清貧の良寛、破戒、風狂の一休和尚のような己にあくまで忠実な禅僧であり続けた。定住せず雲のように流れていきながら、、そして、その死は、突然、スイスの山奥の村で、池に溺れた幼い娘を助けようとして、酒に酔ったまま飛び込んで自分もともに溺死するという「自ら進んで地獄に堕ちた」とも言われた凄まじいものであった。 3344 海を超え 弘文ジョブスの糸の絡み 世界を変える禅のちからよ Beyond the ocean The connection between Kohbun and Jobs That changed the real world That would be the power of Zen
by yasuiga4519h
| 2022-11-02 07:12
| 21世紀のパンセ,読書
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